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シコニンって何?
ムラサキ(紫根)という植物の根に「シコニン」という色素が含まれています。
ムラサキは花は小さくて白い素朴な雰囲気の可愛らしい植物ですが、根は見た目も紫色でシコニンの色を目で見ることができます。
「シコニン」はグラム陽性菌、グラム陰性菌や、真菌への抗菌活性の働きがあり、古くから使われている紫雲膏(しうんこう)は、軟膏の塗り薬として火傷のケアや肌荒れなどの炎症を抑える効果は体感として語り継がれていました。
元々は紫雲膏は漢方を参考に作られたもので、漢方としても消炎、解熱、解毒剤として知られていました。
「シコニン」は、ムラサキ科に属する植物だけが作り出せる赤色のナフトキノン系の化合物のことです。「ナフトキノン」といわれても一般の人は耳慣れない言葉ですが、芳香を持つ有機化合物になります。

紫根エキス(シコニン)は赤い色
「ナフトキノン誘導体」は抗癌作用や抗ウイルス作用などを利用した医薬原料のほか、防虫剤や農薬、解熱薬などにも使われています。
今では肌を元気にさせる効果が認められ、数多くの化粧品メーカーがシコニンを商品化していますが、細胞レベルで科学的に証明され始めたのは意外にも歴史が新しく2000年代に入ってからというのが驚きです。
☆シコニン余談
ムラサキに含まれるシコニンを最初にタンク培養をした話には新鮮な驚きがありました。
(参照:植物とかかわって,そして今 /藤田 泰宏 著 公益社団法人 有機合成化学協会
https://www.ssocj.jp/journal/preface/53-1.php)
口紅への商品化を進めるため、シコニンを早く大量に増産できるための研究で、シコニンが含まれているムラサキ細胞に栄養を与え続けていたら、細胞の増殖はみられてもシコニンが増えない、という結果が出たというのです。
逆に栄養が不足している環境で培養を進めるとシコニンを作り始めたという動きが、人間社会と同じで贅沢な環境では横着になるという関係性に、思わず感心してしまいました。
そういえば、高級食材“松茸”も、林床が貧栄養状態でないと量産できないという話を思い出しました。分厚い栄養価が高い腐葉土の状態だと生育に不向きなんだそうです。
“松茸”も“シコニン”も生命のつなぎ方が少し似ていますね。そしてどちらも日本では大切にされている希少な植物です。

シコニンの研究
紫根化粧品を美容のために使える今の時代は、このように研究をしてくれた方達の努力の賜なんですね。
このような試行錯誤を経てシコニン生産の効率化に成功し、脂溶性のシコニンは口紅を筆頭に化粧品に利用されるようになっていきました。
脂溶性の特徴がよくわかる話として、シコニン誘導体が水に溶けない性質のため、育っている周辺の土(培地)に色素が流れ、土が赤く濁っています。
「シコニン」って日本生まれ?
紫根を使った紫根染めは和の伝統品として今でも人気があります。
淡いトーンや、凜とした強さのある紫色など、色相はさまざまですが、どれも天然成分ならではの味わいのある美しい色で染まっています。
紫染めは中国で始められましたが、染めの技術は日本に渡る前に朝鮮へ渡来した後、日本へ伝来して行われるようになりました。
染めのもととなるのは多年草ムラサキの色素「シコニン」ですが、中国、朝鮮、そして世界に先駆けて日本の女性が単体分離に成功したことは案外知られていません。
紫根の色素研究は当時、イギリスでも行われていましたが、日本初の女性理学博士、黒田チカ(1884-1968)氏が研究に成功しました。
そのため、色素の「シコニン」は日本読みの「シコン」から名付けられています。
注目されるシコニンの有効性
薬学的にいうと、紫根は「高等植物の地下部(根)を基源とする生薬」とされています。
医薬品は高等植物から創製されたものが多く、歴史も長いものが多いのですが、さまざまな植物から次々に有望な薬が生まれています。
紫根の色素、シコニン自体ももともと殺菌・消炎・止血作用が知られていて、「紫雲膏」(火傷や傷、痔)の主な薬剤として紫根が使用されてきました。

紫根を使った昔ながらの軟膏「紫雲膏」
最近では、シコニンの抗腫瘍活性や血管申請抑制作用などが報告され、薬理学的にも注目を集めています。
ガン細胞の増殖を促進する因子の活性を妨害するタンパク質がプロテアソーム(タンパク質の分解を行う巨大な酵素複合体)で分解されるため、プロテアソーム阻害作用があるとされるシコニンは「抗ガン作用」もあるといわれていて、臨床試験の結果から、白血病、乳がん、肺がんなど多くのがんに対する有効性が報告されています。
ちなみに紫根には「軟紫根」と「硬紫根」と種類があり、漢方薬局などで手に入る安全性が高い紫根は「硬紫根」です。ムラサキの根が硬紫根、西洋ムラサキの根が軟紫根と言われるようで、軟紫根は硬紫根に比べシコニンの含有量が少ないようです。
紫根そのものを見ると既に紫色(赤っぽい色など)なのですが、シコニンは根全体ではなく、表皮細胞のみに重なっていくようで、根を切断して顕微鏡で見てみると、根の周りを色素が覆っているのがわかります。
さらにシコニンが発生するための環境条件もあるようで、光に当てた根ではシコニンは生まれないようです。つまり、シコニン生合成は光などによって阻害されてしまうのです。
シコニンが少ないと薬としての効果はもちろん、染料としても力不足となりますが、現在ではムラサキの自生率が大きく下がり、染料として使える硬紫根はなかなか入手できない時代となりました。
シコニンを含む貴重な紫根を、大切に、そしてありがたく使わせていただきたいと思います。
シコニンの効果まとめ
薬理作用
抗菌 (グラム陽性・陰性菌、真菌) 。
抗炎症 (シコニン誘導体) 。
肉芽促進作用
創傷治癒促進作用
抗浮腫作用
応用
解熱、解毒、消炎薬などの内服薬として
腫瘍、火傷、凍傷、湿疹、水泡、痔疾などの外用薬として

怪我などの治療にも使われてきました
*抗腫瘍作用を役立て、白血病・乳がんなどの臨床応用の研究が始まっています。
さらに麻疹の予防や肝炎の治療としても注目されていて、実際に利用もされています。
*漢方では清熱涼血・解毒作用を利用し、初期の麻疹や、紫斑、黄疸、吐血、鼻血、血尿、腫れ物にも効果があると古くから利用されています。

紫根エキス和漢自然派基礎化粧品
伝統の紫根のチカラを
お肌に届ける化粧品
日本の伝承品「紫草の根 紫根(シコン)」の歴史は古く、万葉集に見ることができます。美健漢方研究所では、1978年、創業当初より歳月をかけて“紫根の力”を最大限に引き出す「紫根基礎化粧品」を開発、改良を重ねてきました。使い続けることでお肌自体をリフレッシュして“肌の自活力”を高めてくれます。